2026年5月22日
笑顔の感染源
保育園から「噴水のように嘔吐」と呼び出し。本人は終始ニコニコ。そして、父はゾンビになる。
今日、仕事中に保育園から電話が掛かってきた。
保育園や学校からの電話というのは不思議なもので、鳴った瞬間に脳内で緊急アラートが鳴り響く。大体ロクでもない知らせだ。
案の定だった。
「息子さんが嘔吐してしまって……」
はい。
「かなり勢いよく……」
はいはい。
「下痢もありまして……」
はい。
「熱もあります」
役満である。
俺はのんびり仕事を切り上げ、保育園へ向かった。
そして到着して真っ先に俺が見たもの。
笑顔。
めちゃくちゃ笑顔。
全てを包み込むニコニコである。
症状だけ並べると、
嘔吐。
下痢。
発熱。
微笑み。
最後だけおかしい。
病気のステータス画面に「幸福」が混ざっている。
先生からは「噴水みたいに吐いてしまって……」と説明を受けた。噴水て。そんなロマンチックな単語で表現していい現象なのか。
しかし本人は終始ご機嫌。
病院へ連れて行く道中も笑顔。
診察待ちでも笑顔。
診察中も笑顔。
何なら先生に愛想まで振りまいていた。
そして診察の結果。
熱はほぼ下がっている。
本人も元気。
やっぱり笑顔。
ここで俺は思った。
「あれ? 本当に具合悪かった?」
というのも、息子は最近ずっとお腹が緩い。これだけはおかしいんだけど。
発熱も珍しくない。
しかも時々、B級ゾンビ映画の序盤で感染者が吐き出す謎の液体みたいなものを突然リバースする。
正直、今回もその延長線上なんじゃないかと思った。
もちろん心配はした。
したけど。
目の前でキャッキャしてる息子を見ると説得力がないのである。
結果的に大事には至らず、無事帰宅。
よかったよかった。
そう思っていた。
思っていたのだ。
だが帰り道。
妙に身体が重い。
疲れたのかなと思った。
子供の看病って気を張るし。
でも何か違う。
肩が重い。
関節が痛い。
寒い。
嫌な予感しかしない。
そしてその夜。
俺は高熱を出した。
見事なまでの発熱である。
しかも吐いた。
盛大に吐いた。
昼間に保育園で聞いた話を、そのまま俺が再現していた。
あの時の息子はこういう気持ちだったのか。
いや違うな。
息子は笑顔だった。
俺は笑顔じゃない。
むしろ真顔である。
トイレの前で人生について考えるレベルの真顔である。
結論としてはこうだ。
あの日一番元気だったのは息子だった。
一番重症だったのは俺だった。
そして今ならわかる。
保育園でずっと笑っていた理由を。
あいつ、多分知ってた。
次は父ちゃんの番だって。
よーーーし!父、頑張るからな!
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