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2026年10月7日

10月7日の日記、先に書いておく

これは、二週間後の10月7日の僕が書くはずの日記を、先に書いてみたもの。 ―― 10月7日。晴れ。 朝六時に目が覚めた。目覚ましより一時間早い。昨日の夜、なかなか寝つけなかったのに、目が覚めたときは頭がすっきりしていた。 今日は、ずっと書いていた短編の締切日だ。 応募するのは、ネットで作品を募集している小さな短編の賞。賞金は大きくないし、たぶん落ちる。でも、締切のある場所に作品を出すのは、これが初めてになる。 原稿自体は、三日前にいちおう書き上がっていた。枚数は規定のぎりぎり。昨日の夜は最後の読み直しをして、気になっていた最後の一文を三回書き直した。三回目で、一回目に戻した。 朝ごはんは、母が焼いたトースト。バターを塗りすぎて、母に「朝からそんなに」と言われた。 午前中は、応募フォームの確認。タイトル、ペンネーム、あらすじ。あらすじは四百字以内。これが一番難しかった。自分の話を四百字にまとめようとすると、何を書いた話だったのか分からなくなる。三回書いて、三回とも四百字を超えた。四回目で、登場人物の名前を一人削って、ようやく三百九十字になった。 昼前に、資格の勉強を一時間だけやった。模試の復習の続き。午後に応募するつもりだったので、それまで原稿を見ないようにするための時間でもあった。見ると、また直したくなる。 昼ごはんは、冷蔵庫にあった焼きそば。温め直したら、麺が少し固くなっていた。ソースを足して食べた。食べながら、応募フォームの注意事項をもう一度スマホで読んだ。ファイル形式、文字数、ペンネームの表記。三回読んで、三回とも同じことが書いてあった。 午後二時。机の前に座って、応募フォームを開いた。原稿のファイルを添付して、あらすじを貼って、送信ボタンの上にカーソルを置いたまま、五分くらい動けなかった。 動けなかった理由は、自分でもよく分からない。落ちるのが怖いというより、これを送ったら、この話が僕の手を離れる、という感じがした。書いている間は、いくらでも直せた。送ったら、もう直せない。 結局、母が階段の下から「洗濯物取り込んで」と呼んだので、その勢いで押した。 送信完了の画面が出た。受付番号が表示されたので、スクリーンショットを撮った。 洗濯物を取り込んだ。タオルがよく乾いていた。 取り込んだ洗濯物を畳みながら、応募した短編のことを考えないようにしようとして、結局ずっと考えていた。 短編は、商店街の古い写真館の話だ。春に一度書き上げたものを、ほとんど最初から書き直した。最初は、写真館の主人の話だった。書き直すうちに、主人よりも、昔撮った写真を受け取りに来る客の方が気になってきて、最後は視点を入れ替えた。最初の版を読んだ友達が今の版を読んだら、同じ話だと気づかないかもしれない。 書き直している間、何度も最初の版に戻りたくなった。最初の版の方が、書いたときの勢いがあった。でも、読み返すと、勢いで書いたところほど、説明が足りなかった。八月の終わりに、一度全部を印刷して、赤ペンで線を引いた。線を引いたところを数えたら、百か所を超えていた。その印刷した束が、今日引き出しにしまったものだ。 洗濯物を畳み終わったとき、タオルの枚数が一枚足りなかった。探したら、ベランダの物干しの端に一枚残っていた。 それから、一時間くらい散歩をした。家の近くの川沿いを、いつもより遠くまで歩いた。途中の公園で、小学生がサッカーをしていた。ボールが一回こっちに転がってきて、蹴り返したら全然違う方向に飛んでいった。小学生に笑われた。 歩きながら、次に何を書くかを考えていた。まだ何も決まっていない。前から考えている長い話に取りかかるか、また短いものを書くか。とりあえず、送った短編のことは、結果が出るまで考えないことにする。結果が出るのは十二月らしい。 夕方、帰ってきたら、父が珍しく早く帰っていた。応募したことは、家族には言っていない。父は夕刊を読んでいて、僕が帰ってきたのに気づいて「おう」と言った。僕も「うん」と言った。 夕飯は鍋だった。十月にしてはまだ暑いのに、母が急に鍋の気分になったらしい。汗をかきながら食べた。 夜、机の上を片付けた。書きかけのメモ、印刷した原稿の束、付箋。印刷した原稿は、クリップで留めて、引き出しの一番下に入れた。 空になった机の上に、新しいノートを一冊置いた。表紙には何も書いていない。明日から、ここに次の話を書く。 寝る前に、スクリーンショットの受付番号をもう一回見た。数字が並んでいるだけの画面なのに、何回も見てしまう。 今日は、ちゃんと送れた。それだけで十分。 ―― 以上が、10月7日の予定。 今の時点では、原稿は半分しか書けていない。あらすじは一行も書いていない。締切が本当に10月7日なのかも、あとでもう一回確認する。 予定通りにいったら、この日記の答え合わせをここに書く。いかなかったら、たぶん書かない。
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