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2015年2月1日

11年前の冬

11年前の2月1日、父が倒れた。 わたしはまだ学生で、実習の最終週やった。 朝、実習先の病院に向かう電車の中で母から電話があって、そのまま引き返した。 父が運ばれた病院は、家から一番近い総合病院。 救急の待合で、母と二人でずっと座ってた。 何を話したかほとんど覚えてない。 自販機のお茶を買ったけど、二人とも飲まなかった。 夕方になって、担当の先生から説明があった。 脳の血管のことで、命は大丈夫だけど、右手に麻痺が残るかもしれないということ。 わたしは実習で習ったばかりの言葉がいくつも出てきて、分かるのに分からないような、変な感じやった。 実習は、先生に連絡したら「家族を優先して」と言ってもらえた。 その週の残りは休んで、後から補習を受けた。 父はその後、半年くらいリハビリに通った。 右手は完全には戻らなかったけど、箸は左手で使えるようになった。 今でも左手で箸を持ってる。 本人はもう慣れたって言ってる。 あのとき、病棟の看護師さんが父に話しかけるのを、ずっと横で見てた。 父は機嫌が悪くて、ほとんど返事をしなかった。 それでも看護師さんは毎回、名前を呼んでから話しかけてた。 自分が看護師になって、同じように返事をしない患者さんを受け持つと、あのときの父の顔を思い出す。 あの看護師さんが何を考えてたのか、少しは分かるようになった。 今日は父に電話した。 特に用事はなかったので、「元気?」だけ。 父は「元気や」と言って、30秒で切れた。 いつもそんな感じ。 2月になると毎年思い出す話なのに、今年は8月に思い出した。 病棟で、同じ病名の患者さんが入院してきたからやと思う。 その人の娘さんが、待合で自販機のお茶を二本持ったまま座ってた。 声をかけたら、ちょっと驚いてた。 今日はここまで。 明日も日勤。
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